健康コラム

総胆管結石症と急性胆管炎

総胆管結石症と急性胆管炎


福岡みらい病院 外科
坂牧 仁

令和6年1月1日付けで福岡みらい病院 外科に赴任致しました坂牧仁と申します. 母教室である福岡大学消化器外科では, 胆道良性疾患(主に胆嚢結石症, 総胆管結石症の外科治療および内視鏡治療)を担当しておりました. 今回はその経験から, 私のライフワークである総胆管結石症と急性胆管炎に関する治療戦略を簡単に紹介させて頂きます.

(1)疫学, 疾患の特徴

総胆管結石症を含む「胆石症」は, 本邦においても成人の約10%にみられ, 日常診療において大変一般的な疾患となっています. 総胆管結石症は「胆石症」の20%を占め, 胆嚢結石症との併存例は全体の約13%と報告されています. 胆嚢結石症と違い, 発症する部位の解剖学的特徴から胆道感染症(胆管炎や膵炎, 二次性胆嚢炎など)を併発し比較的重篤化しやすい疾患です.

(2)診断(別表1: 重症度判定基準)

急性胆管炎は重症度判定基準(急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018)に基づいて病態の重症度が判定されます. ご高齢の患者さんが殆どですので, 可及的速やかに入院管理下での治療が必要です. 多くの場合胆管炎の原因は総胆管結石であり, 一般血液検査に加え腹部超音波検査, CTおよびMRCP検査などの画像診断が有用です. 総胆管結石症および胆管炎が確診または疑われる場合, 次に示すフローチャートに準じて治療が実践されます.

(3)治療(別表2: 診療フローチャート)

急性胆管炎の重症度判定を行った後, 診療フローチャートに基づいて治療を行います. 内視鏡治療の主目的はドレナージによる胆道減圧と, 胆道感染症の原因となっている総胆管結石の摘出です. 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)手技を用いた緊急処置(十二指腸乳頭括約筋切開術(EST), 逆行性胆道ドレナージ術(ERBD), バスケット切石術(EBL)など)が必要となります. 特に急性胆管炎に循環障害や意識障害などを併発した時は, 以前急性閉塞性化膿性胆管炎(AOSC)と呼ばれた重症急性胆管炎(GradeⅢ)と診断され, 急激に全身状態が悪化し生命予後に重大な影響を及ぼすため, 可及的速やかな処置治療が必要です.

急性胆管炎の主原因である総胆管結石症は比較的高齢者に多く, また余病などの併存により炎症が重篤化しやすいため, 胆管炎発症早期の「的確な診断」と「適切な治療」が重要です. 本病態が疑われるときは, いつでもお気軽にご相談下さい.

別表1:重症度判定基準

 

別表2:診療フローチャート
 

 

EST, EBLの実際

 

ERBDの実際